ケーススタディ ·
従業員が一桁の「工場」―― 公開記録が言えること、言えないこと
以下は典型的な一場面の実演です(匿名化しており、特定の顧客の言葉ではありません)。実際の案件で、公開記録が「この会社には問題がある」という結論をくれることはほとんどありません。返ってくるのは、互いに裏づけの取れないいくつかの事実で、それは自分で聞きに行くしかありません。
最初に手元にあった情報
社名はきれいで、サイトには「自社工場12年」と書かれ、見積は他の二社よりおよそ二割安く、クロージングを強く急がされていました。三つとも単独では問題になりません。三つそろうと、一度止まって考える価値があります。
公開記録に映っていたもの
登記では設立6年、事業範囲には「生産」「製造」といった語が入っていましたが、社会保険の加入者数は長く一桁でした。登記上の住所はオフィスビルで、同じ住所に無関係な業種の会社が二十社以上登記されています。
記録が示せないこと
公開記録は、生産ラインがどこにあるか、どの工場と長く取引しているか、安い理由が規模なのか別のことなのかを教えてくれません。これらは聞くしかありません。そして、聞けること、答えが返ってくること自体が情報です。
いくつかの具体的な質問に変える
「ラインはどの市にありますか。工場内の短い動画を送ってもらえますか」「この住所には何社が登記されていますか。借りているのは一部屋ですか、フロア全体ですか」「社会保険の加入者が6人なのはなぜですか。ライン作業員は外部委託ですか」。三つとも失礼な質問ではありません。答えがない、あるいははぐらかされたものが、さらに掘るべき場所です。
こういう案件で私たちがすること
「これは詐欺だ」という結論を代わりに出すことはしません。公開記録ではそこまで支えられないからです。私たちがするのは、調べられる記録を一つずつ調べ、調べられないものは「調べられない」と明記し、聞くべき質問を並べることです。最後の一歩は依頼者が進むものですが、少なくとも何を聞けばよいかは分かります。